レイニー・デイズ・ストーリー

8.最終話 気持ち

「フー」
「うひゃぅ!」

 8月、霧雨が降る放課後、文芸部の部室での会話……ではなく、やり取り。

 私はと言うと、彼氏役の膝に座って本を読んで居たのだが──。

「いやぁ、さすが感度がいいね~」
「はぁ、またそうやって……」

 先日、エッチぃ事は部室ではメッて、しっかり言ったはずなんだけど……。

「ハァハァ、我慢出来ないヨ……」
「!?」

 身の危険が……!

「ちょっ、1回降ろして!」
「アハハッ! 大丈夫だよ……ジョウダンだから…………」

 怪しい事この上無いな。

「まぁ、それはともかく……」
「ん?」

 ナニやら真面目な顔(後ろだから見えないけど、雰囲気で)になったので、本を閉じる。

「君って……エロイ事この上無いよね?」
「シャラァァップ!!!」

 部室に、少女の澄んだ声が響く。

「ゴメンゴメン、ジョーダンだよ。ただ言いたかっただけだし、君はあんまりエロくないし」

 がっしりとホールドされているため見えないが、今振り返れば、きっと満面の笑顔でテへペロってるだろう。

「どっちかって言うと……愛くるしい事この上無いって感じかな?」

 ……確かに、胸も小さいし、スレンダーと言えば聞こえは良いが、何せ背が低い。いってしまえば──

「──幼児、体型……」
「えぇっ!? そんな事──な、無いよ!」
「ハハッ、イイんだヨ……別ニ……」

 今度は、少女の渇いた声が鳴った。
 
「え~と………僕はそんな君が好きだよ?』」
「……『あぁ、そんな事言わないで! 勘違いしてしまうわ!』」
「『勘違い何かじゃ無い! ……僕は、君を愛してる!』」

          ─────例の本21巻より抜粋。


「まぁ、冗談はこの位にして……本題に入るよ?」
「幼児、体型……」
「あ、アレ? もしかして、本気で気にしてる?」
「ハハハッ、……大丈夫、ダイジョーブ、DAIJOb……」
「ごめんごめんっっ! さっきの嘘だから! 君はセクシーでプリティーだから!! ねっ?!」
「ほんとぉ?」
「もちろん! だからホラ、泣かないで、ね?」
「……………うん。わかった!(ニコッ)」
「ぐはっ!」

 さて、彼氏さんがぶっ飛んだ所で……。

「で、本題って?」
「……キミって……結構ブリッk」
「なぁに?」
「イエ、ナンデモナイデス……」


 ニコッと笑った。それだけだ。


「えぇーとね、そう、1つ訊きたいんだけど」
「ん?」
「キミってさ、最近GLモノ読んでる?」
「どうして?」
「良いから……読んだ?」
「んー……いや、最近は全く読んで無いな……」
「やっぱり、普通の恋愛小説──まぁメルヘンなんだけど──兎も角、男女の恋愛が書かれたヤツばっかり読んでるっしょ?」
「……メルヘンかどうかは分からないけど、普通のを読んでるね」

 すると何故か、とても残念な子を見る目で見られた。
 失礼な。

「まぁ、良いや。……で、はっきり言って、今、百合に興味ある?」

 うーん、改めて聞かれれば……。

「大して無いかなBLの方が………》」
「ウワー、はっきり言うねー。後、変な幻聴が……」

 確か最初の頃は、在った筈だ。

「それで……男との恋愛もしてみたくない?」
「…………」

 正直言おう。彼女がこう言うのは予想していた。

「まぁ、したくないと言えば、嘘になる……」

 すると彼氏役が、満面の笑みに!!

「そっかそっかー……そこでモノは相談なんだけど──」
「な、何?」

 まさか、別れようとか言い出すんじゃ……。
 いやいや、それは無い…………はず。
 でも、まさか……。
 やっぱり、私の事…………。

「──男の私と、付き合ってくれない?」
「…………へ?」

 何て言った? ……男の、私?

「ま、まった! それってどう言う……」
「あー、ごめん。説明が足りて無いね。
 ……えーと、私としては女の子なキミの事が、すきなの」
「う、うん……」

 照れるな……。

「それでね、まぁこの世では、女同士だと子供もつくれないし、結婚も出来ないし、世間の目も冷たいし……」
「うん」

 まぁ、確かにそうだろう。

「でも、私はキミとの子供も欲しいし、結婚もしたい…………」
「う、うん……」
「だから、私が男になれば、……それとキミがOKをくれれば、付き合って……結婚してほしいな……って……」

 彼女は……彼氏役は、私の目を見ていない。気まずいのだろう。

「……あのさ」

 出た声は、思ったより、低くて、固かった。

「私は……私は、何時でも受け入れるつもりなんだ……」
「──え?」
「その、な……私も……その」

 ……前回は駄目だった。今回は、今回こそは、勇気を──。





「男になって、私と……付き合って下さいっ!」
			

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