レイニー・デイズ・ストーリー
7.進展→デレッ!
「どう、面白い?」 「もちろんだよぉ~」 7月の終り頃、小雨が降る放課後、文芸部の部室での会話。 って言うか、20日。 例の本の発売日だ。放課後になってすぐに買って来たのだが…… 「いやぁ、大変だったよ」 「うぅ、ありがと………」 買いに行こうとした私に、『私が行くよ』と言い出したのだ。 『いや、私が行くからいいよ』 『そんな事言わないで。第一、1巻から33巻持ってるのも私だし。 それに、君は全巻揃えたいタイプじゃん』 『それはそうだけど……』 『何より、こう言うのは彼氏の役目でしょ?』 『う~ん……そ、それじゃあ、お願いしようかな?』 『ウンウン』 『じゃあ、気を付けて、ね……』 『っっっっくぅ! デレ頂きっ!!』 『でっ、デレてないっ!』 最後のは余計な気もするが……と、兎も角。歩いて30分もする本屋まで、買いに行って貰ったのだ。 しかも、苦労して買った本を、自分が読む前に他人 に貸すのだ。……私だったら発狂してる自信がある。 「──そうして私に恩を売ってしまったのであった…………」 「うっ……」 軽率な行動を取ってしまったか……アレ? 「……何か今更じゃないか?」 「ん?」 思い返しても見れば、私は幾つも願いを叶えて貰っている。 「あぁ、確かに」 「って事は、今までと大して変わらないな」 「そうだねぇ」 ────となると……。 「結局の所、恩は一杯有るんだから、何かあるなら言ってよ」 「う~ん……あっ」 「思い付いたか?」 「……あのさぁ、私達恋人じゃん?」 「うん」 「けど、やってる事と言えば……」 手を繋いだりする程度だ。 「つまり、もうちょっとスキンシップをしたいって事か?」 「そうそう。……細かく言うと、部活中は私の膝に座って欲しいのと、自由に頭を撫でる権利と、自由に抱き締める権利と、さらにキスをする────」 「ちょっ、まっ、ストーーーップ!!」 「え、何?」 キョトンとする彼氏役。 「どんだけ言うつもりだよっ?!」 「どんだけって……こんだけ?」 子供のように手を広げる彼氏。 「いや、そう言うのはいいから」 「良いの?」 「違うっ! 言わなくていい方のいいっ!」 「はいはい。それでキス──」 「だからストーーーップ!!」 「もう、だから良いのか悪いのか言ってよ」 「う、う~んと……そ、そう言うのは もっとお互いをよく知ってからと言うか…………」 「な~に真っ赤になって俯いて言ってるのさ」 はっきり言って、そろそろ次の段階に進みたいとは思ってる。 けど、勇気がいまいち湧かない……。 「い、いや……えっと…………」 「ん?」 「だから、その……」 落ち着け私! 今こそ勇気を出す時だ! 「…………キス以外のなら、良いよ」 ごめんなさい、ヘタレで……。 「っっっやったぁーーー!!」 「うへっ!?」 しかし、何故か興奮して目を耀かせる彼氏役。 「いやぁぁ、これぞツンデレの極み! 萌え~だよっ!!」 「え? え?」 「じゃあ、早速お願い」 な、何だ? 何が起きたの?! 「どうしたの? ボケボケして」 ボケボケって……。 「まずは、私の膝に座って?」 「え、あっハイ」 慌てて彼氏役の膝に座る。と、ギュッと抱き締められた。 「って、何やってるのっ?」 「何って、ギュッてしてるだけだよー」 と言いながら、今度は頭を撫でて来た。 「あ、暑いんだけど……」 「大丈夫! 私達の愛の方が、熱いからー」 「ちょっ……!」 「んー、何ー?」 「そ、その……わっ、私もそう思うぞっ!」 「っっっっっ!!」 さらに強く抱き締められる。 は、恥ずかしい! きっと顔は真っ赤だろう。 けれど抱っこされていて、顔は見えないだろうし……良かったぁ。 そんな事を思う彼女役だった。