レイニー・デイズ・ストーリー
9.エピローグ
9月、良く晴れた放課後、文芸部の部室での日常。────話。
部室には、部長である少女が、1人本を読んでいる。
そこに、背の高い男子高校生が入って来た。
すると、少女は椅子から立ち、男子高校生を座らせ、その膝の上に、自ら座った。
男子高校生は、左腕で少女を抱き、右手でその頭を撫でた。
どうやら2人は、恋人の様だ。
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あの後、目を瞑らされた私が目を開くと、彼女は彼になっていた。
ネコっぽい目や、その笑顔は変わらなかったが、少し背が高すぎないかと文句を言うと、恋人の身長差は、これ位の方が良いと言われた。フム……。
そしてその後聞いた話は、耳を疑うモノだった。
何でも、彼女の一族は魔女の家系だが、その呪われた力には大きな制限がかけられている。
魔力を使い切らなければ18才で死んでしまうこと。
それから、他人の願いを叶える事以外では、魔法を使えないこと。
更に魔女の子は魔女に成ってしまうこと。
つまり彼女は、18歳までに、他人の願いにより男に成りたかった──なんだとか。
「ごめんね、何だかんだでキミを利用してた……」
「大丈夫。私はお前の事が好きだし、お前も私の事好きなんだろう?」
「もちろんっ!!」
「ほら、じゃあ良いじゃん」
「……うん」
「──ただ、その姿で“私”はキモいぞ」
「えぇっ!? ひどい……」
男に成れば魔法は使えなくなるが、使ってない魔力はそのまま……結局18で死んでしまう。
それに子供は、魔女の運命に巻き込みたくない……。
この状況では、自分が男に成って欲しいと願われ、そして叶える瞬間に魔力が尽きるのが必需条件だったのだ。
彼女は、それをやり遂げた。……並みじゃない苦労をし続けていたのだろう。
その事を打ち明けられた日のことを思い出していると、彼が部室に入って来た。
「遅かったな」
と言いながら、私は席を避ける。
「掃除当番だからね。がまんしてよ」
と言いながら、彼は空いた席に座った。
「それは良いけど…………」
と、言いながら彼の膝に座った私の頭を彼が撫でる。
「~~~♪」
「ご機嫌だね」
「キモチイイからね」
最初こそ、恥ずかしさから嫌がっていたが、1度身を委ねてみると、以外と気持ち良い……。
「ふぅ…………そう、そう言えば、男の体に成った感想を聴こうと思ってたんだよ」
「感想かあ……うん、まずトイレだね。……つい女子トイレに入った時のビンタはイタかったし……でも、一回一回、おしっこの時に座らなくて良いのは、思ったより楽だったな」
「へぇ、……他には?」
「そうだねぇ……おしっこの度拭かなくて良いのは……」
「トイレネタは、もう良いよ」
「やっぱり?」
そう言って笑い会う恋人達。
「そうだな…………ブラをしないのは、少し違和感あったな…………」
「あー、今なら分かる」
「でもムレないのは良いよ!」
「……」
「…………プッ、あははっ! 懐かしいね、この会話」
「そうだね」
……2人でそうやって話していると、雨が降ってきた。
「……結構土砂降りだけど、帰るまでに止むかな」
「…………止むよ」
「ん、何で?」
「だって……私が女に成った日も、帰る時には止んだから」
「…………そうだね」
2人は窓の外を見た。
そこには、あの6月の中場の、あの日と同じ雨空が広がっていた──。