Progressive Trans-Sexual
3.後編
異変を感じたのは、七ヶ月前の朝のことだった。
いや、実際に異変があったのは八ヶ月前なのだけれど、その頃は大して気にも留めていなくて、最初の異変を見逃していた。
ある朝目を覚ました私は、起き上がるのも億劫なほどの倦怠感に襲われていた。
数日前から何となく感じていた違和感が、この日明確な体調不良となって私に襲いかかったんだ。
しかし朝食の準備もしないといけない私は、達也……旦那が起きる前にある程度進めようと支度にかかっていた。
起き上がって、パジャマから普段着に着替え、洗面所で身支度を整えて。
キッチンへ行ってエプロンをつけて、いざ調理を始めたところで、私はトイレへと駆け込んだ。
食べ物の匂いが……我慢ならなかった。
胃のあたりがムカムカとして、とにかく気分が悪かった。
結局ソファで横になって休んでいるうちに達也が起きてきて、ご飯を作ったり洗い物をしたり、ゴミ出しに行ってもらったり……全部やってもらって申し訳ないことをしたと思う。
昼過ぎくらいに体調が良くなって、お昼を作って食べれたんだけど、ずっと口の中がネバネバしてるような気持ち悪さが続いていて、酸っぱいもの……レモン果汁をかけた冷やしうどんを食べた。
というか妙に酸っぱいものが妙に美味しく感じてかなりポッカリレモンをかけた……。
その後は安静にしながらも最低限掃除洗濯をして過ごした。
その日は買い物に行かず、冷蔵庫にあるもので夜ご飯を作ることに。
17時になって、今だ重たい体にムチを打ってキッチンに向かおうとしたところで、ガチャンと玄関の扉が開く音がした。
そしてすぐに響く、聞き慣れた「ただいまー」の声。
「た、たっくんおかえりなさい! って、どうしたのこんな早くに? リストラされた?」
「されてないよ! ……うん。そんな冗談を言えるくらいには元気みたいで良かった」
「おかげさまで……」
いや本当に、朝はひどかった。
朝の時間がない時に全部やってもらって悪かったとは思うけど、同じ状況になっても頑張れる気がしない。
「朝は本当にごめんね……」
「気にしないで。っていうか、いっつも祐奈一人でやってくれてるじゃないか」
確かに普段は私一人でやっているけど、でもその分早く起きているから時間はあるし、ゴミ捨てもいつもは達也が出勤してからのんびりと行っている。
それに私はいつもやっているから慣れているし、達也はそれから仕事があるんだ。
どう考えたって大分迷惑をかけたはずだ。
私が納得していない表情をしているのに気付いたのか、彼はあきれたようにため息をついた。
「お前あれだもんなぁ……小さい頃から古めかしい理想のお嫁さん像持ってたからなぁ」
「むぅ、失礼な」
家事を完璧にこなし、旦那の三歩後ろを静々と着いていき、旦那が辛い時や何かを決心した時は静かに微笑んでそっと支える……そんなお嫁さんを貰うのが私……おれの漠然とした夢ではあった。
まあ高校生三年の時にPTS症候群──Progressive Trans Sexual(進行性性転換症候群)の略──にかかって女になってしまい、完全に女になる前から達也に惚れてしまったから、叶わぬ夢になってしまったんだけど。
まあ依然としてその理想のお嫁さん像は私の中にあって、そんなお嫁さんを貰うことから、そんなお嫁さんになることが私の夢になったんだ。
そんな回想から意識を今に戻して、達也にもう一度問う。
「……それで、ずいぶん早いけど今日はどうしたの?」
「そうそう、これ、試してみてほしいんだ」
そう言って達也がカバンから出したのは『妊娠検査薬』と書かれた箱だった。
「…………え?」
箱をまじまじと眺め、そして達也の顔を見つめた。
……すごく真面目な顔で見つめ返された。
「えーっと、もしかしてだけど……」
「ああ。お前先月生理来てないだろう? もしかしてとは思ってたんだけど、今日の様子を見てな」
おおう、確かに先月来てないけど……元男だしイレギュラーもあるよなくらいにしか思っていなかった……。
「使い方は箱に書いてあるから……」
「う、うん」
しかし、妊娠か……もちろん致してる以上、全く考えてないわけではなかった。
しかしなんというか……元から女だった訳じゃないせいなのか、私が子供を生む……産めるという自覚、実感が薄いのだと思う。
この二文字を突き付けられてようやく、ここ数日……特に今日の体調の異常が何を表しているのか気付いた。
でも、もしかしたら違うかもしれない……もしそうだったら嬉しいような不安なような。違ったら、何か大きな病気かもしれないし……。
頭の中がグチャグチャしたまま、機械的に箱に書かれている通りにして、結果が出るのをトイレの中、一人で待つ。
一分で結果が出る
トイレから戻った私は、気恥ずかしさからうつむきつつ、検査薬の小さな窓……赤い縦の線が浮かび上がったそれを達也に突き付けた。
「えっと……なんていうか……責任とってね?」
「いやもうとってるだろう」
うん。そうだ。もう結婚してるし、式も挙げた。
「えと、えと、ごめん。こういうとき、どんな顔をすればいいかわからないの……」
「…………笑えばいいと思うぞ?」
笑う……そうだ。これは喜ばしいことだ。
正直、実感がわかなさすぎて戸惑いの方が大きい。
だけど、私の中に、達也との愛の結晶が宿っていることを考えると、自然と笑みがこぼれていた。
そっと、彼が私の背中に腕を回し、優しく抱きしめてくれた。
「……これから、一緒に頑張ろう。いつも祐奈が俺を支えてくれようとしてたけど、これからは俺がお前を支えるから」
「たっくん……」
こうして、私の妊婦としての生活は始まった。
「妊娠七週目って所ですね。心音も確認できますし、順調です。……見えます? この黒い空間が胎嚢です。それでこの白い影が赤ちゃんですよ」
超音波検査の画面を必死ににらみつけるが、ぶっちゃけ何が何だか分からない。
「え、ええと……よくわからないです」
「ははは、まあ最初はそんなもんですよ。もう少しすればハッキリしてきてわかるようになりますよ」
「あの……私……」
私は、ずっとあることが気になっていた。それは私が生まれた時からの女ではないことだ。
だけど先生は──PTS症候群になったあと私を担当してくれていた先生だ──は柔らかい笑顔を浮かべてこう答えた。
「PTS症候群でしょう。大丈夫。PTS症候群は珍しい病ですが、事例を見た感じ妊娠出産には影響ないことがわかっています」
「そ、そうですか……」
「しかし、別の要因で赤ちゃんと母胎が危険にさらされることはあります。
お母さんお父さんのための説明会などのパンフレットも渡しますので、行ってしっかり勉強してください」
「はい!」
「うわぁ……まさかこれを私がつけることになるとは……」
「この時期が一番危ないらしいから、できるだけ家でゆっくりしていてほしいけど……もしバスとかに乗るときに辛くなったら、黄門様みたいに突き付けてでも優先席座るんだぞ?」
カバンに着けたマタニティマークをまじまじと眺めていると、真剣な表情の達也がそう言って来た。
「わ、わかってるって」
しかしこれ、もう三回目になるやり取りだ。
「……お腹出てきたなぁ」
「う、うん……」
「どうした? 複雑そうな顔して」
ずっと家にいるわけで、ボディメイクには気を使ってきたんだ。特に女になってからは筋肉量も減って基礎代謝も落ちたから、太りやすくなったし。
こまめな運動を心がけていた分、喜ばしいことではあるけど同時に複雑な思いに駆られた。
「はぁ……たっくんて昔から気使いはできるのに乙女心は分からないよね……」
「え?」
「……って前言ってた割に最近良く食うよなぁ」
「うるさいなー。赤ちゃんのためにも栄養取ることは必要なんだぞ!」
お医者さんにもそう言われたし間違いない。
あーうまうま。
「食べ過ぎは良くないし、バランスにも気を使えって言われただろ」
「つーん」
「はぁ……」
なんとでも言いたまえ。ぶっちゃけこれでも男の頃より食べてないし。
「たっくんたっくん! いま! 動いた!」
ある休日の午後、私と達也が家でゴロゴロしていると、お腹の中から自分の意志とは明らかに違う動きを感じた。
「なに!? 本当か!?」
「ほんとう本当! ……あっ、またっ!」
達也が私のお腹に手を当てるけど、その間は動かない……ププッ。
「ど、どんな感じなんだ……?」
「うーん……なんていうか、こう……グニーって感じ?」
「ぐ、ぐにー…………」
「ぐにょーんみたいな……」
「ぐにょーん…………」
達也はどうも納得がいかない表情をしているが、しょうがない。だって本当にそんな感じなのだから。
「よし、今度の連休でちょっとした旅行に行くか!」
スケジュール帳を閉じた達也が突然そう切り出した。
「ど、どうしたの急に?」
「安定してる今の時期が、最後に二人だけの思い出を作れる時間だって言ってたしな……」
なるほど……。確かに、子供が生まれたら、2人きりでどこかに行くなんてもうできなくなるだろうし、せっかくだから旅行、良いかも。
「それで、祐奈はどこ行きたい?」
「ロサンゼルス!」
「ちょっとしたって言っただろう! 普通に考えて国内だろう!!」
「もー、冗談だよー。あ、あそこ行ってみたい。この前テレビでやってた花畑が有名な……」
テレビカメラがズーッと横に移動してもなお広がる花畑。
子供が生まれたら三人で……でも、その前に二人だけで行ってみたい。
「ひたちなんちゃら公園だっけ?」
「そうそう!」
「ちょっと待ってなー」
そう言って達也はスマホで調べ始め、すぐに見つけたようだ。
「……茨城だな。ちょうどネモフィラが満開の時期だってよ」
「やった!」
ネモフィラ。私が一番好きな青い花だ。
「よし、じゃあ今度の連休は茨城行くか」
「おー!」
「わぁ……! キレイ……!」
「すごいな……日本に住んでて、こんな見渡す限りの花畑なんてそうそう見れないし」
「ほんと! まるで絵本の中に来ちゃったみたい……」
「そうだなぁ……」
しみじみと呟く達也はなんか年寄りっぽくて面白い。
でも、私もこの景色を眺めているとなんだかしんみりとした気持ちになってきた。
「……たっくん、連れてきてくれてありがと」
「お、おう。どうした急に」
「いや……ほんとにさ。なんていうか……妊娠してから、本当にいっぱい気使ってくれてさ。今更だけど、ほんとに感謝してるんだ……」
不器用ながらも、私の思いを伝える。
そうすれば、きっと伝わるはずだから。
「なんだ……その、実際産むのとかは俺にはどうしてやることもできないからさ、せめて、こうやって支えることしかできないからな」
「ふふっ、ほんとたっくんらしいよね。昔からそう。私が女になった時も、支えてくれたよね」
思えば、達也は高校の頃から変わらないなぁ。
あの頃から達也は私を支えてくれてたっけ。
「たっくん、これからもよろしくねっ」
「……おう」
「あいたたたた……」
「大丈夫か……?」
「こしがー……あう゛ー」
お腹もすっかり大きくなって、体がどんどん重たくなって、腰や膝にもかなり負担がかかるようになった。
歩く時も、お腹を手で支えながら歩くくらいだ。
「とりあえず今日は俺が行ってくるから……休日くらいゆっくり休んでろな?」
「ごめんねー……」
「いたぁ……」
平日の昼間、私は突然下腹部の痛みに襲われた。子宮が収縮するような痛みだ……。
大した痛みじゃないし、ものの数分で引いたけど、それでも不安は大きい。
「まだ予定日までは時間があるはずだけど……」
タクシーを呼び、産婦人科へ向かった私。
お医者さんに事情を説明すると、「前駆陣痛ですね」と言われた。
何でも体が出産に備えて練習しているようなものですよ、とのことで。
……もう少しで産まれるらしい。
その後、破水したらすぐに病院まで来ること(抗生剤を打つために即入院らしい)、逆に陣痛が始まっても、間隔が十分になるまでは自宅で待機することなどを改めて説明してもらい、その日は帰宅した。
夜に達也にそろそろだと告げると、おもむろに会社に電話をかけ、明日からしばらく休むことを伝えた。
「え、大丈夫なの……?」
「ああ。そろそろだと思って、急ぎの仕事は片付けてあったからな。事前に言ってあったし」
「ほんっと! ほんとそういうとこやぞ!!」
「うぇぇっ、どうした急に!?」
全くもう……ほれてまうやろー!!
いやもう惚れっぱなしなんだけど。
私が逆の立場だったら、こんなスマートにはできないだろう……。
そしてその2日後。
最初は重い生理痛くらいの痛みだったのが、30分に1回からどんどんその感覚が短くなって行き、痛みもどんどん増していった。
本陣痛だ……。
私はソファに横になってそれをただただ耐えていた。
「はぁ……はぁ……間隔は……」
「……十五分だったな。もうちょっとだ。頑張ろう」
「う、うん……」
私は息を整えながら、あと十分から十五分後に来るであろう陣痛まで体を休める。
……それしかすることができないんだ。
早朝、三回続けて十分感覚で陣痛が訪れたのを確認して、病院に連絡。そのまま達也の運転する車で病院へ向かった。
「辛いですよね……でもまだいきんじゃだめです。息を静かに吐いて、痛みをこらえて……」
「はぁぁぁぁぁ………っ、ぁぁぁ……」
病院に着いてからも、子宮口が開くまでは分娩室近くの病室のベッドで、陣痛に耐えることしかできない。
陣痛……猛烈な腹痛と共に、猛烈な便意……もちろん出てこようとしてるのは便じゃなくて赤ちゃんなんだけど……でも絶対にいきんではいけない。
本能的にお腹に力が入りそうになるのを、必死に必死に我慢して。
その間、達也は腰をさすってくれたり、ゴムストローがついたペットボトルの飲み物を飲ませてくれたり。
とてもありがたいけど、頭の中で痛い辛い痛い辛いの文字がグルグルと回って、正直周りのことなんか考えていられる余裕はない。
いや、後になって思い返してみれば、この時の達也はまるで無力感に打ちひしがれるように歯を食いしばっていた気がする。
ちなみにこの時間が一番長かった。
朝日が登る前から病院に来て、朝、昼とこの痛みと戦って、昼過ぎになる頃には息絶え絶えになっていた。
午後三時、子宮口が十センチメートル開いたのを確認してもらって、私は最後の力を振り絞って分娩室へ歩いて向かった。
あれよあれよと股を開かされ、「次の陣痛からいきんで」と。
ただしできるだけ声は出さず、自分のへそを見るつもりで状態を持ち上げ、長くいきむ。
「いたいいたいいたいいたい!!!!」
声を出すなと言われても、これまでよりもずっと強い痛みを前に堪えられるわけもない。
数度の長いいきみで、赤ちゃんを押し出しらしい。
赤ちゃんは自分から産まれてくるんじゃない、私が産まなきゃいけないんだ。
「ううぅうううああああ!!!!!
涙がボロボロと流しながら、言葉にならない声を上げて早く産まれて……! と強く願うことしかできない。
どれくらい経った頃か、汗と涙で顔がグチャグチャになっていると思う。けどそれを恥ずかしいと思えないほどの地獄の苦しみの中で、助産師さんの声が響いた。
「頭見えましたよ!! もう少しです! 頑張って!!」
その言葉を聞いた瞬間、僅かばかりの安堵と、あと少し、あと少し頑張らなきゃという思いが生まれ、私は最後の力を振り絞っていきんだ。
もうここからは悲鳴というより雄叫びというような……気持ちで声を上げていた。
それまで痛い、辛い、早く楽になりたいと言う気持ちが強かったのが、気付けば、元気に、生まれてきてほしい。早くその元気な姿を見せてほしい。そういう思いに変わっていた。
「はい、いきむのやめて! 力抜いてー」
先生のその言葉を聞いて、いよいよと悟った。
事前の説明であった、短促呼吸というやつだ。
このままいきんでると一気に赤ちゃんが出てきて、股が裂ける可能性が高くなるらしい。
強く握りしめすぎて強張った手を棒からはずし、胸の上に置いて短くハッハッと息をする。
そのまま続けていると「頭出ましたよー!」「肩出ました!」と次々に助産師さんの声が上がった。
そして。
「産まれましたよ!! 元気な男の子です!!」
その台詞の後、大きな泣き声が分娩室に響き渡った。
「あ、赤ちゃん……」
抱かせてもらった赤ちゃんはキラキラと輝いていて、この瞬間までの痛みや辛さが一気に報われた気がした。
「無事に、産まれてきてくれて、ありがとう……」
泣き止んで私の乳を吸う赤ちゃんに、微笑みかける。
本当に、本当にありがとう……。
「ママですよー」
「ま、ま」
「ああああかわいい!!!!」
「パパだぞ~?」
「たー」
「…………」
あれから一年が過ぎた。
赤ちゃん……佑利も言葉を覚え始めた。
しかしどうもパパを覚えられないようで……。
「祐奈がいつまでもたっくんて呼ぶから……」
「たっくんこそ私のこと祐奈って呼ぶじゃない」
まあ、たっくんが仕事に行ってる間にママって教えてるから……だいぶアドバンテージはあるんだけど。
「しかしまぁ、最初に覚えたのはマンマだったけどな……」
「う……」
最初ママって言ったのかと思って、はしゃいで動画を撮ってたっくんに送りつけて、「これご飯って言ってるだろ」と言われた日のことは思い出すだけで恥ずかしい。
「それにしても、この一年あっという間だったな」
「やめてよジジくさい……」
「じじっ!?」
だけどまぁ、同感だ。
生まれつきの女じゃない私に、育児なんてできるのかと思っていたけど、たっくんがいつも支えてくれた。
と言うか普通に産休育休とってくるんだから……ほんと、感謝しかない。
「……そろそろ来るんじゃないか? 鈴木と西野」
「凛ちゃんはこの前結婚して田中になったよ」
「お、おう」
鈴木凛、改め田中凛と西野宮古は、高校時代、PTS症候群にかかってからできた友達で、いつもSNSでやり取りはしてるんだけど、今日久しぶりに会うことになったのだ。
会う、と言うか、二人が我が家にやってくるのだ。
一応片付けや掃除もしたし、簡単なお菓子やお茶も用意してある。
あとは来るのを待つだけだ。
「う、うぁぁぁぁん!!!!」
「あ、佑利が……」
お腹が減ったのか、漏らしたのか、はたまたそれ以外か。
あやそうと立ち上がったところで、ピンポーンとチャイムが鳴った。
「わ、バッドタイミング!」
「いいよ。佑利は俺が見てるから」
「ごめん! ありがとねパパ!」
「気にすんなよ、ママ」
なんて、ちょっと恥ずかしい冗談を交わして。でも、本当に感謝してもしきれないなぁ……。
これからもいっぱい迷惑かけるだろうし、私もできる限り達也を支えていくだろう。
そうして家族三人で力を合わせて、生きていきたいな。
そんな思いを抱き、ちらりと佑利を抱きかかえる彼を見て、私は二人を出迎えに玄関へ向かうのであった。